タイトル：みんなでDEEP DIVE

本セミナーは、揺れ動く国際情勢の中で、日本周辺の安全保障環境をどう捉えるかをテーマに、衛星画像分析を基にDEEP DIVEと参加者が共に考え、共に語り合う場として開催しました。

◆　開催概要

•    日時：2025年12月1日（月）18:00～20:00
•    会場：ホテルグランドヒル市ヶ谷東館2階白樺西
•    参加者数：152名（申込者162名）

◆　登壇者

•    代表理事　小原凡司
•    理事　小泉悠
•    特別研究員　吉永ケンジ

◆　プログラム内容

セッション１：DEEP DECODE 「DEEP DIVEと共に衛星画像を読み解く」

テーマ：「日本の次世代動力潜水艦導入の議論の背景」
登壇者3名より、中国・ロシア・北朝鮮の現状と課題について、衛星画像を用いた分析を交えながら発表が行われた。

中国の原子力潜水艦開発状況（小原凡司）

•    攻撃型原潜093型は改良を重ね、騒音レベルが大幅に改善。推定9隻が建造されているが、配備数は不透明。
•    戦略原潜094型は6隻就役。JL-3ミサイル搭載により南シナ海から米本土攻撃が可能。
•    海南島にある三亜総合保障基地亜龍湾潜水艦桟橋では２本の桟橋が新設された。同基地にはトンネル基地や対空ミサイル部隊も配備。

北朝鮮の潜水艦戦力分析（吉永　ケンジ）

•    約80隻の潜水艦を保有するが、大半は小型艇。
•    重要目標として「8.24英雄艦」（SSB/SLBM試験艦）と「金君玉英雄艦」（SSB）が存在。
•    偵察衛星回避のため天幕遮蔽を実施。「金君玉英雄」は2024年には改修作業も確認。

ロシア太平洋艦隊の活動パターン変化（小泉悠）

• 2024年までは短期パトロール中心だったが、2025年以降は2～3ヶ月の長期パトロールを連続実施。
• 955A型ボレイ級のみが運用され、冷戦期のような継続的戦略抑止態勢の復活を示唆。

情報収集手法と課題
• 無料衛星画像や外国の自治体情報などの活用が有効。
• 分析には事前知識や文化的背景理解が不可欠。

セッション２：DEEP DISCUSSION「参加者と共に日本の安全保障環境を語る」

参加者から寄せられた疑問に対し、登壇者が独自の見解を提示。
主なディスカッションテーマ：
・北朝鮮造船所の新しい建屋における新型（原子力）潜水艦建造の可能性
・米海軍による中国・ロシア戦略原潜の追尾頻度
・市民が軍事情報を自国軍に共有した場合の国際法上の立場
・北朝鮮SSBNの核抑止力としての信憑性
・中朝関係の変化の兆候とロ朝経済・軍事関係の連関
・中国が在日米軍基地を攻撃する可能性と攻撃目標としての各基地の優先順位
・各国の原子力潜水艦の運用パターン
・OSINTにおけるAI活用
・長距離間の通信を行なう超長波アンテナの存在
・危機時の物資供給の課題と状況の変化に適合した対応策
・公開すれば、対象が対策を講じるという「情報のジレンマ」
・地震や潜水艦の存在による漁業への影響
・各国間の文化の違い
・次世代潜水艦導入時代における学生の安全保障に対する心構え

◆　セミナーを通じてDEEPDIVEが考慮した今後のアクション
•    中国の新型095/096型潜水艦の建造状況継続監視
•    中国の戦略原潜の戦略パトロールのパターン抽出のための新たな手法検討
•    北朝鮮造船所の新しい施設の用途確認
•    ロシア太平洋艦隊の新運用パターン詳細分析
•    無料衛星画像リソースを活用した分析手法の標準化

◆　今後の展望
本イベントを通じて、参加者の皆さまが国際安全保障の複雑な背景に触れ、もし少しでも新たな視点や理解の広がりを感じていただけたなら、私たちDEEPDIVEにとって大きな喜びです。日々変動する世界情勢に関する報道等にただ翻弄されるのではなく、公開情報（OSINT）分析を用いたインテリジェンスを通じて各人が情勢を判断し、今何をすべきかを共に考えていくことが重要だと考えています。
今後も、地政学的リスクや国際情勢を多角的にひも解きながら、皆さまと共に理解を深め、問いを共有し、答えを模索する場を築いてまいります。私たちの役割は「答えを一方的に示す」ことではなく、DEEP DIVEが提供する可視化された客観的根拠と分析結果を基に、「各人が自ら考え、情勢を判断し、建設的な議論ができる環境を社会に創出する」ことにあります。
まさに「みんなでDEEPDIVE」しながら、その歩みを一歩ずつ進め、社会の情報リテラシー向上に貢献してまいります。世界が複雑さを増す中で、客観的根拠を社会が共有することによって、一人ひとりが情勢を判断でき、議論に参加することが、持続可能な社会の基盤になると信じています。

（撮影：尾藤能暢）

対話型セミナー「みんなでDEEP DIVE」（有料）開催報告